重症心身障害児 入院する・しないの判断基準は?現場の看護師が事例を解説
2018/06/13
家族が病気を患って、病院に入院する。これって病気の重さにかかわらず、けっこう大きい出来事になると思います。
関係が深ければ深いほど、自分の生活にも、精神にも影響を与えますよね。
「心配だし、なにしてあげればいいかわからないし。先生とか看護師さんいるし。大丈夫だろうけど心配だし。」
医療に関わったことのない方なら、なおさらそうなると思います。
その中でも、重症心身障害を持つ子どもが入院することには、本人にとっても、家族にとっても大きな変化をもたらします。
今回は、重症心身障害のある子どもが入院するということについて話したいと思います。
重症心身障害児が入院する理由
僕が働く重心病棟の患者さんは、様々な事情で入院してこられていますが、共通していることは
「医療が近くにないと生きることが難しい」
ということです。
呼吸器を常に装着していなければいけない患者さんや、発作重積で危険な状態になってしまう方などもいます。
病状に差はあれど、自立した生活が難しく、誰かが介入していないと生きることすら難しい方です。
中には「レスパイト入院」といって、一定期間だけ病院がお預かりし、退院するというものもあります。
これは、介助している家族が介護に疲れてしまい、介護できなくなってしまわないよう「一時的に休止する」時間を作るものです。
家族が一時も離れずにいることで生活できる方もいます。
例えば、定時に痰を出すための吸入をしなければいけないとか。
発作時に危険がないよう観察、必要時には薬の投与、病院への連絡など。
このようなことを家族が行い、生活している方もいます。
しかし、その家族にも生活があります。
働きに出る必要があったり。たまには余暇も必要ですし。将来もずっとこの生活を続けることに限界を感じることもあるでしょう。
そこで家族は「入院」という選択肢をすることがあります。
先ほど説明した「レスパイト入院」ではなく、一般入院することを、です。
わが子の入院を選択した家族の思い
うちの病棟は、現在の医療では回復することの難しい障害を持った子ばかりです。将来的に自立して生活することが難しい。
そのため、一般入院すると退院するタイミングがほぼありません。長期入院になります。
入院患者さんの中には30年以上入院されている方もいます。
ご家族の方は、わが子が病院で長期的な生活することになることを理解し、悩んで悩んで選択されます。
何年か前に、10歳くらいの子がうちの病棟に入院してこられました。
まずは病棟になじめるかどうか、何度も病棟に足を運び、お母さんと一緒に看護師の話を聞いていました。
何度も何度も来院されるのですが、お母さんはずっと不安を感じている顔でした。
そして、その子はうちの病棟に正式に入院することとなりました。
入院して間もないころ、お見舞いに来たお母さんは子どもの頭を撫でてました。泣きながら。
「ごめんね」といいながら。
家庭の事情で家でみることができなくなった。ずっと一緒にいてあげたいけど、できなくなった。
そうせざるを得なかった。
中には「入院できてよかった」と考える家族もいると思うんですが、その気持ちになるには少なからず時間を要したと思います。
「家族が離れる」ということの大きさを感じた出来事でした。
その時、看護ができることは
看護師ができる実質的な業務は、医療的な補助と生活の補助です。生きるための栄養の摂取。入浴や洗髪といった整容。排泄ケアなど。
どれも重要なことではありますが、もっと大切なものがあると思います。
それは、「思いを知ること」です。
患者の思いを知ることで、その時患者が必要とする援助、ケアをすることと同じように、家族の思いを知ることが大切だと思います。
患者を看護すると同時に、そのご家族も看護している。
安心して子供を預けてもらえるためには、家族がどんな思いで入院を選択したか。どんなふうに子どもと関わっていくか。など。
それを聞いたうえで、どんな看護がこの子にとって良くて、家族も安心できるかを考えるべきだと思います。